おかげ話

『宝満堂・今話』 トマトさんのびっくり

『日本昔ばなしのような 宝満堂・今話』 より 

 長年の米農家ですが、ここ数年はビニールハウスのトマト栽培をはじめた人がいます。

 ところが、この人は毎年のように出荷できないたくさんのミニトマトを宝満堂へ持ってきていたのです。つまり、収穫の直前にミニトマトがパチッと割れてしまうのだそうで、出荷できないからと何ケースも宝満堂の台所へ寄付していました。

 陽美子先生にそのことを相談すると、

「あなたは、ビニールハウスに入るときどうやって入ってるの?突然ガタッと戸を開けて入ってるでしょう。それでトマトがドキッと驚いて割れるのよ」

 ええーっ。トマトが驚いて割れる? そんなことってあるでしょうか?

 まるで日本昔話じゃないですか、と普通の人は思いますが、宝満堂に通っている人は陽美子力を知っているのでマジメに聞きます。

 「これからビニールハウスの戸を開けるときはトントンとノックして、トマトさんおはよう、って言って入ったらいいですよ。そしたらトマトが驚かないから」

 教えられた通り、トマトのハウスに入るときトントンとノックして「おはよう」「入りますよ」と声かけするようにしました。すると、ああら不思議、トマトは1個も割れなくなったのです。

 こうしてこの人はトマト栽培の赤字を解消することができました。

 以来、宝満堂の台所はトマト不足になりましたけどね。