おかげ話

『宝満堂・今話』 ご先祖さまの悲しみ

 

『日本昔ばなしのような 宝満堂・今話』 より 

 資産のあるお家の話です。四代つづいた家業の会社で、地元では名前を知られた老舗でした。ところがバブルがはじけて平成の時代に入るとだんだん調子が悪くなり、商品の注文が減ったり、取引先の倒産のあおりを受けて毎月収入が足りない状態。それでも社長は「自分の代で会社をつぶすわけにはいかない」と懸命に走り回って、土地を売ったりビルを売ったりしてしのいでいました。でも、いくらがんばっても悪くなるばかり…。とうとう宝満堂へ相談にきました。

 陽美子先生がこの家のご先祖様にお尋ねしてみると、

『土地を売るのはかまわない。子や孫が困らないようにと残した土地なのだから、必要なときに売ってもよい。ただ、悲しいのは、この会社、この土地があるのはご先祖のおかげ、とただの一度も言わないし思ってもいないことだ。子孫には感謝の念がまったくない。それが悲しい』と本当に悲しそうにおっしゃったのです。

その社長にご先祖様の言葉を伝えると「あ~申し訳ない。ただただ目の前の経営に追われていました」と猛反省しました。それ以来、ご先祖様へお詫びしてお礼を申し上げると経営は少しずつよくなってきたということです。ご先祖様がようやく涙を拭いて、にっこり笑われたからでしょうか。